相続が発生した場合、相続人には単純承認、限定承認、相続放棄という3つの選択肢があります。
遺産には預貯金や不動産といった資産だけでなく、借金などの債務も含まれます。
選んだ方法によってその後の状況が大きく変わる可能性があるため、慎重な判断が必要です。
本記事では、それぞれの相続方法の特徴や選ぶべき状況について、わかりやすく解説します。
相続方法には3種類ある
相続の開始後、相続人が選べる相続方法には、単純承認、限定承認、相続放棄の3種類があります。
財産と一緒に借金などのマイナスの遺産も相続の対象です。
遺産の内容が不明確な場合も多いため、相続人の選択は慎重に行なわなくてはいけません。
選んだ方法によっては、状況が大きく変化することもあるため、選択前に3つの方法の特徴を十分理解することが大切です。
以下で、各方法の詳しい内容について解説していきます。
1.単純承認
単純承認とは、プラスの財産とマイナスの財産を含む、すべての遺産を引き継ぐ相続方法です。
一般的な相続の場合、多くの相続人がこの方法を選択しています。
相続人は故人の預貯金や不動産といった資産だけでなく、借金などの債務も一緒に受け継ぐことになります。
受け継いだ債務の金額が資産の価値を超えている場合、相続人は自己資金で返済を続けていく義務が発生するので注意が必要です。
2.限定承認
限定承認は、遺産の価値を超えた債務を負担しない相続方法です。
たとえば、故人が1,000万円の資産と2,000万円の借金を残した場合、相続人は相続した財産のうち、1,000万円分だけを返済すれば十分となります。
残った1,000万円の借金は返済する必要はありません。
遺産の内容が不明確な場合に特に有効な方法といえます。
ただし、限定承認を選択する際は、相続人全員が一緒に手続きを行わなくてはいけません。
3.相続放棄
相続放棄を選択すると、相続人としての権利と義務の一切を放棄したことになります。
借金が遺産の価値を大きく超えているケースで特に有効な手段です。
ただし、相続放棄を行うと、故人の借金だけでなく、思い出の詰まった実家や大切な遺品なども相続できなくなります。
相続放棄を選択する場合は、家庭裁判所に申し立てる必要があります。
相続方法を選択する際の注意点
単純承認の場合、特別な手続きは不要ですが、相続人の意図に関係なく法律によって単純承認とみなされる場合があるので注意が必要です。
単純承認とみなされると、限定承認や相続放棄の選択ができなくなるため注意しましょう。
相続財産の一部、全部を処分した場合
相続人が遺産を売却などの方法で処分すると、その時点で単純承認したとみなされます。
遺産を自分の所有物と同じように扱う行為は、相続を受け入れる意思表示と解釈されるためです。
「限定承認」や「相続放棄」の手続きを期限内に行わなった場合
相続開始を知ってから3か月以内に限定承認か相続放棄の手続きを行わないと、自動的に単純承認とみなされます。
この3か月間は相続の選択を熟考するための重要な期間です。
期限を超過すると、その後は限定承認も相続放棄も選べなくなります。
不正行為を行った場合
相続人が故意に遺産を隠したり使い込んだり、財産目録への記載を怠ったりした場合、単純承認とみなされます。
このような背信的な行為は、限定承認や相続放棄の手続きを済ませていても単純承認とみなされるので注意が必要です。
3つの相続方法を選択する際の基準
3つの相続方法のうち、どれを選ぶべきか迷う際は、以下の判断基準を参考にしてみてください。
単純承認がおすすめのケース
単純承認はプラスの財産がマイナスの財産を上回っていることが明確な場合に選択するのがおすすめです。
遺産の価値が借金を大きく超えているケースでは、単純承認が最適な選択肢となります。
手続きが不要なため、相続を速やかに進められるメリットもあります。
遺産をスムーズに受け継ぎたい相続人にとって、単純承認は便利な方法です。
限定承認がおすすめのケース
限定承認は、借金が遺産の価値を超えていることが判明している場合や、遺産の内容が不明確な場合に最適の方法です。
また、思い入れの強い遺品を残したい場合にもおすすめです。
手続きは複雑になりますが、大切な遺品を手元に残しながら、債務の負担を遺産の範囲内に抑えられるメリットがあります。
相続放棄がおすすめのケース
相続放棄は債務超過が明確な場合に選ぶべき相続方法です。
借金が遺産の価値を大きく上回っていることがわかっている場合、相続放棄が最も賢明な選択となります。
相続放棄をしないと、相続人が自己資金で借金を返済しなければならなくなるためです。
遺産の価値と借金の額を慎重に確認し、借金が明らかに多い場合は相続放棄を検討するようにしましょう。
まとめ
相続には単純承認、限定承認、相続放棄の3つの方法があります。
選択する方法によって相続後の状況が大きく変わってくるため、慎重な判断が必要です。
単純承認は資産が借金を上回る場合に適しており、限定承認は遺産の内容が不明確な場合に有効です。
相続放棄は明らかな債務超過の際に選ぶべき方法です。
選択期限は相続開始を知ってから3か月以内となるため、遺産の内容を確認し、十分に検討した上で決定することが大切です。
相続方法の選択に迷っている場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
