
遺産分割はすべての相続人による合意をもって成立するものです。もし相続人が1人でも欠けていると無効となってしまいますので、
相続手続きを進める前提として「相続人の調査」は済ませておかないといけません。
どのようにして調査を行うのか、必要書類の内容やその収集方法をここで紹介します。
1.相続人になれる人
相続人になれる人、相続人の範囲は、民法という法律で定められています。亡くなった方本人の意思によってもその範囲を変えることはできず、相続人以外の第三者に財産を受け取ってもらいたいときは遺言書を使う必要があります。
このときの財産を受け取る方の立場は「受遺者」であり、「相続人」ではありません。
そして相続人については、第一に被相続人の“配偶者”と“子”がその権利を得ます。第二に“直系尊属※”、第三に“兄弟姉妹”がその権利を得ます。
※直系尊属とは、被相続人の親や祖父母など上の血族関係者を指す。
配偶者は特殊で、他の相続人との共同相続により常に相続人になることができます。一方で直系尊属や兄弟姉妹については順位の上の人物がいない場合にのみ相続人となることができますので、もし被相続人の子がいるときは相続人にはなれません。
子がいない場合でも、親が相続人となるなら兄弟姉妹は相続人になれず、さらに親もいない場合に限り兄弟姉妹に順番が回ってきます。
2.被相続人との血縁関係は戸籍から判断する
上に示した通り、相続人になれるかどうかは「被相続人とどれだけ親しい仲にあったか」ではなく、「被相続人と一定の血縁関係にあるか」により決まります。
そしてその血縁関係については戸籍から判断することができますので、相続人の調査の最初のステップは「戸籍集め」となります。
戸籍情報は次の戸籍謄本等から読み取ることが可能です。
戸籍謄本等の集め方
戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍などは、被相続人の妻や夫、親、祖父母、子ども、孫などであれば発行の請求をすることができます。
その際は、交付請求書と顔写真付きの本人確認書類(例:パスポート、運転免許証、マイナンバーカードなど)、そして発行手数料を準備しておきましょう。
発行手数料は、戸籍謄本で1通あたり450円、除籍謄本や改製原戸籍で1通あたり750円です。
なお、以前は被相続人の本籍地にある市区町村役場に対して請求をしないといけなかったのですが、法改正により2024年3月1日から、
その他の市区町村でも取得できるようになっています。
戸籍謄本等の読み方
戸籍謄本等を集めることで、子どもは誰なのか、といった正確な情報を調べていくことができます。
ただ、1枚の戸籍謄本等にすべての情報が記載されているわけではありませんので、被相続人一生分の戸籍謄本等を集めなくてはなりません。
抜けている期間がないよう一連のものを用意する必要がありますので、集めた戸籍に記載されている“戸籍の作成日”に着目してください。さらに、1つ前の戸籍の“最終有効日”にも着目して、それぞれの日が同じであれば連続した戸籍を集められたということになります。
その作業を繰り返して一生分集めていくのです。また、そのうえで民法の規定に照らし相続人となるべき人物を割り出していきます。
相続人の調査は弁護士に相談しよう
相続人の調査方法は「戸籍を集めてその情報を読み取ること」であるといえます。こう説明すると単純に見えますが、経験や法律の知識のない方が実際に取り掛かってみると手間のかかる作業であることに気が付きます。
また、自分自身で対応した場合は「本当にこれで合っているのだろうか」と不安も残ってしまいます。相続手続きにおける不備には大きなトラブルに発展する危険性がありますので、特に慎重にならなくてはいけません。
そこで、法律の実務家であり相続問題にも強い弁護士に相談することをおすすめします。戸籍集めから相続人の判定まで、一連の作業は弁護士に任せることができます。万が一相続人同士や第三者との間で揉め事が起こってしまったとしても弁護士なら代理人として交渉を行うことができますので、安心して相続手続きに取り掛かることができるでしょう。