
相続税が課税されるのは相続財産です。いわゆる「遺産」のことであり、亡くなった方(被相続人と呼ぶ。)が持っていた財産を家族などの相続人が取得したとき、その価額を基に税額を計算することになります。
しかしこの相続財産以外にも課税されることありますので、十分に注意してください。当記事ではその代表例である「みなし相続財産」などを解説いたします。
相続税が課税される範囲
被相続人が亡くなった時点で所有していた財産、例えば土地や建物、現金、株式、預金など金銭に見積もることができる財産はすべて相続税の課税対象です。日本国外にその財産が存在している場合でも同様ですし、名義が家族であっても「実質は被相続人の管理下にある財産」といえるのなら広く相続税の課税対象となります。
そこでこれらの財産を取得した相続人は相続税の計算をし、必要に応じて相続税を納付しないといけません。
相続財産以外にも課税されるケース
基本的には「相続財産」に相続税が課されます。
つまり「生前は被相続人のものであって、相続によってその配偶者や子どもなどが取得する財産」が相続税の対象です。
しかしこういった純粋な相続財産以外が課税されることもあります。その代表例が「みなし相続財産」です。他にも「相続が開始される前7年以内に生前贈与された財産」や「相続時精算課税制度の適用を受けて生前贈与された財産」も課税対象です。
これらは相続開始時点で被相続人の財産ではありません。相続ではなく契約に基づいて遺族に支給されるものであったり、すでに相続人等の所有物になっているものであったりします。
それにもかかわらず当該財産について相続税の計算に含めないといけません。亡くなった方から何かしらの財産を受け取った方は「もしかしたら相続税がかかるかも」と留意しましょう。
みなし相続財産とは
「みなし相続財産」とは、相続財産ではないものの、課税の観点からはそれを相続財産とみなす財産のことです。
例えば「被相続人の死亡に伴って保険会社から支給される生命保険金※」や「被相続人の死亡に伴って勤務先の会社等から支給される退職金」などがみなし相続財産となります。
※被相続人が保険料を支払っていた場合。
いずれも元々被相続人の所有していた財産ではありません。生命保険金に関しては、保険会社との契約に基づいて保険会社から受け取ることになりますし、受取人も相続人とは限りません。死亡退職金に関しても、会社等との契約に基づいて会社等から受け取るものです。
「遺産」と呼べるものではなく、相続財産ではありませんので遺産分割協議の対象からは外れます。契約上定められた人物が受け取ることができるのです。
そのため相続手続においては一般的な相続財産と分けて考えることになるのですが、相続税の計算上はそれを課税財産として計算しなくてはなりません。
非課税で受け取れることもある
被相続人が保険料を支払っていたときの生命保険金や、死亡退職金については、常に満額が課税対象になるわけではありません。
次の計算式から求まる金額が「非課税限度額」として認められますので、その金額内であれば非課税で受け取ることができますし、その金額を超える場合でも税負担を軽減することができます。
非課税限度額 = 500万円×法定相続人の数
つまり法定相続人が1人でもいれば500万円まで非課税。4人いると2,000万円まで非課税となるのです。
※相続放棄をした法定相続人がいても、放棄がなかったものとして計算して良い。
課税される贈与財産とは
相続税が課税される次の贈与財産2点についても簡単に紹介します。
- 相続時精算課税適用財産
- 相続開始前7年以内の贈与財産
時精算課税適用財産
一定額まで贈与税の負担軽減しつつ相続開始時にその分の精算を行う「相続時精算課税制度」というものがあります。
早期の財産承継を促す制度として機能しており、この制度の適用を受けて贈与された財産は当初から相続税が課税されることが予定されていますので、当然相続開始時に相続税の課税対象となります。
※相続開始時点ではなく贈与時点の価額で計算する。
相続開始前7年以内の贈与財産
前項の相続時精算課税適用財産であれば、はじめから相続税の計算に含めることがわかった上で受け取っていますので計算漏れなども起こりにくいでしょう。
一方で「相続開始前7年以内※の贈与財産」については、制度を知らないと計算漏れが起こる可能性が高いため注意が必要です。
※改正法が適用された2024年以降の贈与財産については「前7年以内」、2023年以前の贈与財産については「前3年以内」が課税対象。
すでに贈与税の申告や納付をしている場合でも、再度相続税の計算が必要です。ただし納付済みの贈与税に関してはその分を税額控除できますので二重課税とはなりません。
※相続開始時点ではなく贈与時点の価額で計算する。